腾博会官网9885

图片

logo

東京海洋大学研究者インタビュー「海洋から未来を切り開く」

Q 現在の研究テーマを分かりやすく教えてください。

海域~陸域の防災?減災を目的として、「錨(いかり)の研究」、「船の津波防災の研究」、「陸上建築物の水害対策の研究」という三つのテーマで研究しています。
性能が十分でない錨を使用して錨泊していると、いざというときに錨が効かず、走錨事故を起こしてしまうという問題があります。また、港湾内の船が岸壁に係留されているときに津波や高潮が発生すると、船が岸壁に乗り揚げてしまうという問題があります。さらに、陸域に遡上した津波や高潮、洪水を含む水害によって沿岸域に被害が及ぶと、人的被害のみならず住家を含む建築物も大きな被害を受け、被災後の生活再建のために莫大な時間が費やされるとともに、被災者に甚大な精神的?金銭的負担を強いることになります。そこで、私がこれまで海や建築に関わる研究活動を通して培った知見や技術を活かして、沿岸域におけるこれらの被害を防災?減災することを目標として日々研究を続けています。
現在の研究テーマ
Q 研究に取り組み始めたきっかけを教えてください。

私はもともと海洋建築を学び、揺れない浮体の研究を通して海上都市を実現することを目指して腾博会官网9885に進学したのですが、そのために研究開発していたシミュレーションツールが津波防災の研究にも活かせるのではないかという助言を受け、津波の研究の手伝いをすることになったのがはじまりです。ただし、防災に関する研究は人命に直接的に関わる研究ですから、当初は自身のメインテーマとするつもりはなかったのですが、携わり続ける中で大きなやりがいを見出し、かつ必ず誰かがやらないといけないテーマでもあることから現在まで研究を続けています。現在は、岸壁に係留された船舶の防災を対象として、船とともに浮き上がることで船舶の乗り揚げを防災?減災する浮体式津波対策用施設?設備の研究や、津波被害予測や防災対策に関するデータベースの作成などを行っています。
錨の研究は、本学に赴任してから本格的に始めたテーマなのですが、学生時代に先ほどのシミュレーションツールが錨の研究に使えるのではないかという話を受けたことがはじまりでした。現在用いられている錨には多くの課題点があり、そのため度々走錨事故を起こしています。しかしながら、現在錨に関する研究を行っている研究者がほとんどおらず、誰かがやらなければと考え、研究を始めました。現在は、走錨しにくい舶用新型錨の研究開発や浮体式洋上風車などに代表される浮体式海洋構造物のための錨の研究開発などを行っています。
建築物の研究に関しては、私の有している浮体や津波を含む水害、建築に関する知識を陸上の建築物の防災?減災対策に応用できないかと考えたことがきっかけです。現在は主に住宅を対象としているのですが、津波にも対応できる浮体式防災住宅を実現することを目的に研究を行っています。浮体式防災住宅は、水害発災時に浮力によって建物を浮かせて、さらにそれを囲む防壁によって津波の流体力や漂流物を防ぐことができれば住宅とそこに住む人達を水害から守ることができるのではという発想から研究を始めました。
Q 研究の面白さややりがい、大変な点を教えてください。

新しいアイディアを発案したり、実験模型を作ったり、シミュレーションプログラムを作成したり、実験やシミュレーションを実施したり、結果についてあれこれ議論したり、それらの結果を論文としてまとめたり…研究活動の創造的なプロセスはどれもが面白く、やりがいを感じるものなので、それらについて大変だと感じることはありません。ただ、大学の先生とはいっても研究だけやっているわけにはいかず、それ以外のことに費やす時間が実は研究以上に多かったりします。研究は膨大な時間を要するものにも関わらず、そのための時間がなかなか取れない中でどうやってバランスをとるか、どうやって時間を捻出するかというところがとにかく大変だと感じるところです。そのほかに大変なことがあるとすれば、よりよい研究を行うためにはお金のことを考えなければいけないことでしょうか。
研究の面白さややりがい
Q その研究の未来を語ってください。
:短期的なもの(1~2年後程度)と長期的なもの(~10年後)

「錨の研究」に関しては、新型錨を実際の船に積んでもらって、事故のリスクを減らすということが長期的な目標です。海洋構造物用の錨についても同様で、実際に使用してもらうことがゴールですね。そのためには、研究室で新しく開発した錨が実海域で使えるということを示さなければなりません。さらに、実際に使用してもらうためには、規則に則った試験をクリアして、承認を得る必要があります。そこをクリアすることが短期的な目標といえると思います。
「船と建築物の水害対策の研究」では、それぞれ様々な防災対策を提案しているので、それらを実際に建造して、防災?減災対策として役立ててもらうことが大きな目標です。そのためには、基礎的な有効性の確認だけでなく、コスト面を含む実現性を示すことが重要だと考えています。
私の研究テーマでは最終的に必ずモノを作ることになります。ただし、モノを作るためには当然お金がかかります。そのためには、ニーズを把握すること、水害や走錨事故の危険性、私の提案する防災対策の有用性をより多くの人に知ってもらうことが重要になります。現在は、論文や雑誌記事の執筆、一般向けの体験型講義などを通してより多くの人に私の研究を知ってもらえるよう活動しています。
Q 研究は、SDGsのどの目標に貢献できますか。

「目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう」
「目標11:住み続けられるまちづくりを」
「目標13:気候変動に具体的な対策を」
「目標14:海の豊かさを守ろう」
産業でいうと、いま日本で錨を扱っているメーカーは2社しかありません。船において錨は安全を担う重要な器具であるはずなのですが、そこで使われている錨は海外から輸入されるものも多くあります。気候変動への対策として注目されている海洋再生可能エネルギーの観点で見ても、例えば近年洋上風車が話題になっていますが、浮体式の洋上風車を係留するためにはやはり錨が必要です。それも海外からの輸入に頼らざるを得ないのが現状です。それらに対して、国産の新型錨が認められ、使用されるようになれば産業界にとってもよい影響があるはずですし、海洋環境汚染問題、気候変動問題に対してもよい影響をもたらすと考えています。また、船と建築物の水害対策に関する研究は、気候変動を含む環境問題に配慮しながら住み続けられるまちづくりに貢献できる研究といえます。
Q 東京海洋大学で研究する良さはどんなところですか。

船舶運航性能実験水槽や回流水槽、錨水槽といった実験施設、練習船「汐路丸」など、海に関する研究を実施する環境が整っているところです。
また、本学は総合海洋系大学ですから、海に関するプロフェッショナルな先生方が揃っていて、新しい研究アイディアについて相談できる先生がたくさんいるので、海系の研究をやる人間にとってはとても恵まれた環境だと思っています。
Q 研究を行う上で大切にしていることやポリシーを教えてください。

研究には近道はなく、一見遠回りに見えても着実に一歩一歩進めていくということです。
あとは自分の研究に没頭していると視野が狭くなってしまいがちなので、外に出て実際に自分の目で見て、肌で感じることを忘れないようにすることが大切です。また、常に周囲の情報を気にしつつ、けれどもそれに流されないようにすることも大切です。
例えば、津波の研究でいえば東日本大震災が起きた時、講演数や論文数がものすごく増えたんです。ただし、レベル2津波と呼ばれる東日本大震災級の津波の発生頻度は、数百年~千年に一度といわれていて、もう少し規模の小さいレベル1津波と呼ばれる津波であっても数十年~数百年に一度といわれています。そのため研究を続けていても日の目を見ない可能性が大きく、また人は喉元を過ぎれば熱さを忘れてしまいがちということもあり、しばらく経つと津波の研究発表の数はとても少なくなってしまいました。錨も過去には多くの研究が行われていましたが、現在主要な研究テーマのひとつとして研究を行っているのは私くらいかもしれません。人と争うことは好きではないので個人的には自分のペースで研究できてよいのですが、周囲が別の研究テーマに移っていく中でも自分が重要だと考えたテーマであるのなら信念を持って研究を続けていくことが大切だと考えています。
Q 研究に疲れた時のリフレッシュ方法を教えてください。

週末に愛犬と触れ合ったり、一緒に散歩に行く時が一番癒されます。あとは音楽が好きなので、音楽を聴いたり、自分で演奏してみたりすることも気分転換になります。ただ、最近はソフトウェアインストゥルメントがとても充実しているので、寝るまでに1時間あるなと思って仕事で散々にらめっこしたパソコンと改めて向き合ってさらに疲れてしまうなんてこともあるのですが。他には寝る前のウォーキングは運動不足の解消とともに頭の中を整理できてとてもよいリフレッシュ法になっています。
Q 研究者を目指す人へのメッセージをお願いします。

最近の学生さんは、研究をどうやって自分のキャリアに結びつけるか、そもそも研究で食べていけるのかなど、とても現実的に物事を考える傾向にあると思います。先行きの不安定な現在においては致し方ないところもあると思いますが、私の頃も不景気と盛んに言われていましたし、就職も中々に厳しい時代でした。そんな中で、私たちは研究に没頭しながら将来の見通しなんかなにもないけど、ここには夢だけはあるからなとよく話をしていました。皆、心の底では多かれ少なかれ将来への不安もあったはずですが、それ以上にもしかしたら自分の研究が世の中を変えるかもしれないということに大きな夢を見て楽しんでいたと思います。是非、これから研究者を目指す人達も夢を持って、楽しんで研究をしてもらいたいです。とにかく楽しむこと。もちろん、ここでいう楽しいは苦労や辛さも含めての話なのですが、充実していれば苦労や辛さも楽しさに変わるということを知って欲しいですし、できるだけ多くの人に苦労や辛さを乗り越えて自分の限界を超える体験をしてもらいたいです。

ページのトップへ