腾博会官网9885

图片

logo

東京海洋大学研究者インタビュー「海洋から未来を切り開く」

応用生命科学専攻 博士後期3年 守谷奈津子さん 魚の品種改良を加速する、高速育種技術を確立。

Q 現在の研究テーマはなんですか。

魚の代理出産技術を応用し、品種改良を高速化する技術を開発しています。具体的には、成熟までに通常4~6年もかかるキングサーモンの精子を、半年で成熟する超早熟ニジマスに生産させるという研究に取り組んでいます。
その背景として、いま世界的に水産物の需要が増大しており、このままでは過剰漁獲により天然資源が減少してしまうという事実があります。そこで水産物の安定供給を可能にする方法として、完全養殖が注目されています。
完全養殖というのは、天然種苗に頼らず、人工孵化させた仔魚を親魚まで育て、その親魚から卵を取って再びその次世代を作るというサイクルを人の手により完全に制御することです。ところが完全養殖には、飼育が困難な魚種が多かったり、餌や飼育にコストがかかったりといった問題があります。それを解決するために、病気に強い魚や、早く成長する魚、食べて美味しい魚を作る品種改良が注目されています。
品種改良とは具体的になにをするのかというと、美味しかったり、早く成長したりという優位性を持った魚を選抜して交配するという操作を何世代も繰り返すことで、目的とする特徴を持った集団を作り出す技術です。ところが多くの養殖対象魚種は成熟するまでに2年~5年を要し、これが品種改良の加速を阻んでいます。この世代時間を短くする方法として温度や日照条件をコントロールしたりホルモンを投与したりする方法があり、早く成熟する個体を作り出すことはできますが、依然として成熟時期を大幅に前倒しすることはできていません。
そこで私が所属している研究室では、世代時間を短縮する新しい技術として代理親魚技法という技術を開発しました。代理親魚技法というのは、ドナー種の卵や精子の元となる生殖幹細胞を近縁種に移植することで、ドナー由来の次世代を代理親から作るという技術です。この技術を応用することで、成熟までに長期間を要する魚の精子や卵を、より短期間で成熟する魚に生産させることができ、品種改良における世代時間の短縮が可能になりました。それでもやはり成熟までに1年や2年はかかってしまいます。そこで半年という短期間で成熟する超早熟な魚を作り、これを代理親魚技法の専用の宿主にすることで、新たな品種改良促進法である高速育種法を構築するというのが本研究のテーマです。すでにデータは得られていて、成熟するまで4~6年を要するキングサーモンの精子を半年で獲得することに成功しています。この技術を品種改良に応用すると、従来、新しい養殖品種を作り出すまでに30年近くかかっていたところ、数年にまで短縮することができ、養殖品種を飛躍的に早く作ることができると期待されます。
Q 研究に取り組み始めたきっかけを教えてください。

代理親魚技法を確立した吉崎悟朗教授の研究室が担当する授業や実習が楽しくて、いろいろな魚の生理機能を使って、こういった機能とこういった機能を組み合わせたら、こんな新しい技術ができるようになるというクリエイティブなところに惹かれ、研究室に入りました。そこで吉崎教授からこのテーマをいただいたのが、研究をはじめたきっかけです。
研究を始めたきっかけ
Q 研究の面白さを教えてください。

結果がどうなるかわからない問題を知恵と工夫で解決しようと試行錯誤していくうちに、どんどんその目標に近づいていく。その試行錯誤の過程がとても面白いです。吉崎研究室に所属して6年目になるのですが、入ったばかりの頃は、そもそも実験や研究に携わったことがなくゼロからのスタートだったので、なにをすればよいのか全くわかりませんでした。遺伝子改変したニジマスを作るところから研究をスタートしたのですが、当然最初は全然うまく行かなくて、半年くらいよい成果が出ませんでした。やはり私は研究に向いていないのかなと思いながら、とにかく実験を重ねていくうちにようやくブレイクスルーできて、実験の肝となる実験魚を作出できました。そこからは研究が軌道に乗り、いまに至っています。
Q 研究の大変な点を教えてください。

私の研究は魚がいないと全く成り立たない研究なので、実験魚をいかに死なないように育てるか。死んでしまったら実験がストップしてしまい、もう一度魚を作るところからやり直しになります。そうなると魚が成長するまでに2年くらいかかるので卒業できなくなってしまいます。魚を健康に育てて維持しながらも実験を進めていく。魚の飼育と研究の両立が、慣れるまでは本当に大変でした。
研究を始めたきっかけ
Q 研究によって、どのような社会的インパクトが期待できますか。

品種改良には5世代くらいかかります。そうすると、従来は世代時間が5年だと5×5で25年以上かかっていたところを、私が改良した半年で成熟する魚を使えば、半年×5でおよそ3年にまで短くできます。それに加え、餌代、水槽代、電気代といった魚を飼育するコストも大幅に削減することが可能です。品種改良を促進させる上で、本当に画期的な技術だと考えています。
Q 研究は、SDGsのどの項目に貢献できますか。

「目標14:海豊かさを守ろう」です。天然資源よりも、より良い特徴を持った魚を、より早く作ることができる。海洋資源を保全して持続的な形で利用していくということに貢献できると思います。
Q 東京海洋大学に入学するにあたり、影響を受けた人や出来事はありますか。

幼少期から海で遊んでいて、漠然と海の生き物が好きだったのですが、中学、高校と進学するにつれ、一般教養や生物の授業を通じて海の生き物の面白い特徴や生理機能を知り、生物学的にどんどん興味が湧いてきて、海の生き物を生理学的な面から学べる大学に行きたいと思い本学を志望しました。
Q 東京海洋大学を選んでよかった点を教えてください。

海の生き物を学ぶにしても、他の知識も必要です。本学では、まずは海に関する一般教養を学んでそこから学年が上がるにつれ、自分が興味あることに特化していきます。海に関する知識を幅広く学べることがよいところだと思います。
また座学だけではなく本当に実習が多くて、海でのリアルな体験を通して学ぶことができます。そこが本学の強みだと思います。
Q 腾博会官网9885への進学を決めた理由を教えてください。

もちろん研究が面白かったということもありますが、自身でデザインした遺伝子を卵に導入し、遺伝子組み換えニジマスを作るところからはじめて、ようやくよい結果が出てきたのに、それを論文としてまとめる前に卒業してしまう。研究を後輩に引き継ぐよりも、自分で論文を書き、世の中に公表するところまでやりたいと思い、博士まで進むことに決めました。
Q 将来の夢や目標など、目指すキャリアを教えてください。

アカデミアに残りたいと考えています。いまは吉崎教授のところで研究していますが、海外の研究室に行ってポスドクをやりたいなと思っています。どういった研究をしたいかという具体的なアイデアはないのですが、もっと視野を広げて多角的に考えられるようになりたくて、そのためにも海外で経験を積んでみたいです。
修士(博士)課程への進学を検討している人(受験生)へのメッセージをお願いします。

博士課程へ進むには、経済面や年齢的なこと、人生プランといった障壁や不安もあると思いますが、いまは奨学金などもあるので、そういったものを利用しても進学するのもよいのではないかと思います。自分の研究が楽しいのなら、勇気を出して進むことです。

ページのトップへ