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東京海洋大学研究者インタビュー「海洋から未来を切り開く」

Q 現在の研究テーマはなんですか。

陸上の金属鉱山から出る廃水や汚泥などの廃棄物を、環境負荷を抑えた方法で処理する研究を行っています。現在のメインは陸上の金属鉱山ですが、将来的には海底鉱物資源開発にも利用できる技術を目指しています。
具体的には、陸上鉱山から採取した廃水を実験室で中和処理し、鉱山で行われている廃水処理効率を調べています。処理した廃水中に含まれる銅や鉛、亜鉛などの有害元素を分析しながらパソコンでシミュレーション結果と比較することで、そこで生じる化学反応を考察して、より効率的な処理方法や処理条件を調べています。
研究の面白さ
Q 研究に取り組みはじめたきっかけを教えてください。

学生の頃、海底熱水噴出孔における生命の起源に関する地球化学分野の研究を行っていました。そこで海底熱水鉱床の金属資源利用に関する社会的なニーズが高まっているということも学び、海底鉱物資源の開発を行う際の環境問題を勉強していくうちに、陸上鉱山でも様々な問題がいまだに多く解決されていないことを知りました。現在、国内の陸上鉱山のほとんどが閉山していますが、いまだそこから生じる酸性の坑廃水処理に多額の人件費や電力、薬剤のコストがかかっています。それを削減するために、微生物や湿地、水路など自然動力を活用した処理技術の活用が検討されています。
Q 研究の面白さややりがいを教えてください。

自然のものを対象にしているので、いままでわかっていなかった化学反応が実験結果として得られることがあります。例えば亜鉛やカドミウムといった多少除去しにくい元素でも、マンガンを介した反応を利用すればより簡単に除去できます。単なる技術開発だけでなく、物質の相互反応が明らかになってくるというところが面白いところです。
Q 研究の大変な点を教えてください。

面白さと同様に自然のものを対象にしているので、様々な成分を含む環境試料の分析や結果考察に、常に新しい知識や技術が求められます。たとえば、1種類の元素でも水中や沈殿物中で様々な化学形態をとるので、分子レベルで解析しないと詳しい化学反応がわからないということが、難しいけれどやりがいでもあります。
研究の面白さ
Q 研究によって、どのような社会的インパクトが期待できますか。
短期的なもの(1~2年後程度)と長期的なもの(~10年後)教えてください。

短期的には、北海道の鉱山を対象に微生物を使った廃水処理技術の研究を進めています。坑廃水中に存在する鉄酸化細菌を活用することで、処理効率がかなり向上しました。ここ数年でそういった鉱山を増やしていきたいと思っています。
長期的には、陸から海へと資源開発の対象が変わりつつあるので、将来的に海底鉱物資源開発が行われるときに、これまで陸上鉱山の廃水処理で蓄積した様々な技術を転用することで、環境負荷の小さい形で実施できるのではないかと期待しています。
Q 研究は、SDGsのどの目標に貢献できますか。

「目標6:安全な水とトイレを世界中に」
国内では鉱山廃水をそのまま環境中に放出することでいろいろな公害が起こってきた歴史があります。それらは様々な規制や技術によって解消されていますが、国外に目を向けると未だ同様の健康問題が起こっている場所が多くあります。鉱山のみならず、様々な汚染水を対象にいまの技術を集約していくことで、世界中でよりよい水環境を整えていきたいと考えています。

「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
金属資源はどうしても産業に必要なものなので、環境負荷が小さい技術を選択できれば、より持続的に産業の基盤をつくっていけると思います。

「目標13:気候変動に具体的な対策を」
鉱山開発の分野でもカーボンニュートラルが非常に進んでいて、使っている電力を減らしたり薬剤を減らしたりすることで、処理に必要なエネルギー量を削減できると考えられます。すでに開発してしまった鉱山の裸地を緑化し、微生物などの自然動力を活用した廃水処理技術を導入することで、温室効果ガスの削減に寄与します。

「目標14:海の豊かさを守ろう」
海底鉱物資源開発において、環境への影響を重視した技術の開発に貢献できると思っています。
Q 東京海洋大学で研究する意義はなんでしょうか。

非鉄金属資源分野の研究は、銅やレアメタルなどの世界的な需要の増加とともにこれからも重要になってきます。そういう金属資源開発に興味や技術、知識を持つ人材をきちんと育て、海洋も陸上もどちらの開発も担えるような広い視野を持った人材を育成していくことが非常に大事です。
Q 研究で大切にしていることやポリシーはなんですか?

研究成果は、必ず社会に還元することが大切だと考えています。論文や学会発表を通しての学術的な還元はもちろんですが、幅広い視点を持った学生を育ててこの分野を活性化させる。教育と研究の両立を意識することを大切にしています。
淵田茂司准教授のOA論文はこちら

論文標題:Leaching of Metals and Metalloids from Hydrothermal Ore Particulates and Their Effects on Marine Phytoplankton
著者?共著者:Shigeshi Fuchida, Akiko Yokoyama, Rina Fukuchi, Jun-Ichiro Ishibashi, Shinsuke Kawagucci, Masanobu Kawachi, Hiroshi Koshikawa
掲載誌:ACS Omega
発行年月:2017年7月
DOI:10.1021/acsomega.7b00081

論文標題:Kinetic Modeling and Mechanisms of Manganese Removal from Alkaline Mine Water Using a Pilot Scale Column Reactor
著者?共著者:Shigeshi Fuchida, Shota Tajima, Takuro Nishimura and Chiharu Tokoro
掲載誌:Minerals
発行年月:2022年1月
DOI: 10.3390/min12010099

論文標題:Understanding the biogeochemical mechanisms of metal removal from acid mine drainage with a subsurface limestone bed at the Motokura Mine, Japan
著者?共著者:Shigeshi Fuchida, Kohei Suzuki, Tatsuya Kato, Masakazu Kadokura and Chiharu Tokoro
掲載誌:Scientific Reports
発行年月:2020年12月
DOI: 10.1038/s41598-020-78069-9

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